平成14年度京都大学附属図書館公開展示会![]() |
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Ⅰ.出版文化のコスモロジー ——中国から朝鮮・日本へ—— 中国の書物の形態が巻子本から冊子本へ、抄本から刊本へと変わるのは、宋代以降である。そして、出版文化が空前絶後の盛況をむかえたのは、14世紀モンゴル時代、大元国(ウルス)治下の江南においてであった。こんにち伝わる明刊本、朝鮮版、五山版、抄本は、この時代に福建の建安で刊行された元刊本に基づくものが多い。モンゴル政府の熱心な文化政策と出版活動、高麗・日本との従来になく活発な貿易によって生じた「人とモノの流れ」、の結果、東アジアの文化はまさに一体となった。朱子学の浸透、古典文学の復興、イスラムの知識の流入による理系分野の学問の新たな展開等が看取され、物事をビジュアルに理解するための挿図本、あらゆる分野の知識の精髄を簡潔にまとめた類書(百科事典)も登場した。ここでは、モンゴル時代の学術、文化、諸制度を、時代と国を越えて、いかなる階層の人々がいかに受容していったか、「類書」、「雑書」、「禅籍」を切り口として紹介する。 |