平成14年度京都大学附属図書館公開展示会

〔II〕

Ⅱ.『幼学指南鈔』とその周辺 ——日本での受容——

 中国文化の「学び」の核心は、経書を治め聖人の心を会得し、それを実践することにあった。果てなき「学び」の行程であるが、そこにも確かに始まりは存在する。ここでは、今回重要文化財指定を受けた『幼学指南鈔』を出発点に、初学の者がどのように「学びの世界」に足を踏み入れたかを展示する。中国古典から多様なジャンルごとに学ぶべき項目を摘録し配列した「類書」と「幼学書」が、強い連続性を有することに注意されたい。また、「幼学書」の典型として、さらに「類書」が新たな知を生む資源として機能する例として、「孝子説話」の演変を伝える資料も併せ展示する。書物を媒介に説話が多様性を増幅していくありさまは、中国文化のもつ活力と、日本の文化受容の懐の深さを示すとしてよい。東アジアにおける文化の創造性はこうしたダイナミクスのなかで発揮されたのだが、それが日本など中国文化受容のフロンティア、さらに幼学書や通俗書といった、「学びの世界」の周縁に顕著に現れることがあるのも興味深い。



電子図書館ホームページ貴重資料画像

Copyright 2003. Kyoto University Library