オープンアクセスとは、学術論文に対して誰もがインターネットを介して無料でアクセスして利用できるようにすることです。オープンアクセスによって、単に情報アクセスの平等が推進されるだけではありません。研究成果の共有と再利用が進むことで、さらに学際的な研究やイノベーションの創出を促進し、その成果を社会に還元するという波及効果があるのです。論文をオープンアクセスにすると、著者にとってもメリットがあります。
研究者の声~KURENAIに登録するメリット
発行担当者の声~ KURENAIで雑誌を公開するメリット
特別企画:喜多一先生インタビュー
オープンアクセス実現の方法としては、次の2つがあります。
大学等が構築・運用する機関リポジトリ等で論文をオープンアクセスにします(ジャーナルによって公開条件が付く場合があります)。京都大学の所属者は、京都大学学術情報リポジトリ「KURENAI」に論文を登録することができます。
APC(Article Processing Charge, 論文投稿料)を支払う等により、ジャーナルのオープンアクセスオプションを選択し、論文を出版と同時にオープンアクセスにすることができます。
オープンアクセス出版を行うジャーナルの中には、APCの収益を目的とした粗悪な学術誌(いわゆる「ハゲタカジャーナル」)も存在しますので十分にご注意ください。
論文の投稿先を検討する場合の参考情報として、データベース「Web of Science」をご利用下さい。ジャーナル単位でオープンアクセスかどうかを確認することができます。
Web of Scienceでは、データベースに収録された論文等の引用データにもとづき算出された学術雑誌に関する統計情報や評価指標が提供されています。
京都大学の所属者はAPCの割引を受けられる場合があります。投稿手続きの前に、割引があるジャーナルかどうかご確認ください。
京都大学におけるAPC支出状況の調査を行い、その報告書を公開しました。
「オープンアクセス」は大手商業出版社による学術雑誌の寡占状況及び価格高騰(シリアルズ・クライシス)に対する対抗運動として、1990年代後半頃から発展しました。2002年に設立され、オープンアクセスに関する代表的な定義として知られる「ブダペスト・オープンアクセス・イニシアティブ(Budapest Open Access Initiative)」では次のように定義されています。
By “open access” to this literature, we mean its free availability on the public internet, permitting any users to read, download, copy, distribute, print, search, or link to the full texts of these articles, crawl them for indexing, pass them as data to software, or use them for any other lawful purpose, without financial, legal, or technical barriers other than those inseparable from gaining access to the internet itself. The only constraint on reproduction and distribution, and the only role for copyright in this domain, should be to give authors control over the integrity of their work and the right to be properly acknowledged and cited.
Budapest Open Access Initiative (BOAI) 2002
http://www.budapestopenaccessinitiative.org/read
[ピアレビューされた研究文献]への「オープンアクセス」とは、それらの文献が、公衆に開かれたインターネット上において無料で利用可能であり、閲覧、ダウンロード、コピー、配布、印刷、検索、論文フルテキストへのリンク、インデクシングのためのクローリング、ソフトウェアへデータとして取り込み、その他合法的目的のための利用が、インターネット自体へのアクセスと不可分の障壁以外の、財政的、法的また技術的障壁なしに、誰にでも許可されることを意味する。複製と配布に対する唯一の制約、すなわち著作権が持つ唯一の役割は、著者に対して、その著作の同一性保持に対するコントロールと、寄与の事実への承認と引用とが正当になされる権利とを与えることであるべきである。
「ブダペスト・オープンアクセス・イニシアティヴから10年:デフォルト値を「オープン」に」
https://www.budapestopenaccessinitiative.org/boai10/japanese-translation/
世界的なオープンアクセスの潮流に対応し、日本では2010年代を通して、政策形成、政府・研究助成機関・研究機関等によるポリシー策定が進みました。
これらの政策文書を受けて、政府・研究助成機関等でオープンアクセスポリシーの策定が進みました。
大学等研究機関でも研究成果論文のオープンアクセス化を義務、または推奨する方針の策定が進みました。京都大学は2015(平成27)年に、日本の大学として初めてオープンアクセスの義務化を定めた方針を策定しました。2023(令和5)年2月現在、50以上の大学等研究機関でオープンアクセス方針が策定されています。
2010年代末以降、従来のオープンアクセスに研究データのオープン化を加えた「オープンサイエンス」の推進や、APCの負担増をはじめとしたオープンアクセスの普及に伴う課題への対応に関わる取り組みが国内外で活発化しています。