論文をオープンアクセスにするには

オープンアクセスとは

オープンアクセスとは、学術論文に対して誰もがインターネットを介して無料でアクセスして利用できるようにすることです。オープンアクセスによって、単に情報アクセスの平等が推進されるだけではありません。研究成果の共有と再利用が進むことで、さらに学際的な研究やイノベーションの創出を促進し、その成果を社会に還元するという波及効果があるのです。論文をオープンアクセスにすると、著者にとってもメリットがあります。

  • インターネット上で全世界の人に無料で論文を読んでもらうことができます。
  • 論文が引用される可能性が高まります。
  • 研究成果を社会に還元することができます。
  • インターネットにつなげば、自分の論文をいつでも確認することができます。

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論文をオープンアクセスにするには

オープンアクセス実現の方法としては、次の2つがあります。

【グリーン・オープンアクセス(セルフアーカイブ)】

大学等が構築・運用する機関リポジトリ等で論文をオープンアクセスにします(ジャーナルによって公開条件が付く場合があります)。京都大学の所属者は、京都大学学術情報リポジトリ「KURENAI」に論文を登録することができます。

【ゴールド・オープンアクセス(オープンアクセス出版)】

APC(Article Processing Charge, 論文投稿料)を支払う等により、ジャーナルのオープンアクセスオプションを選択し、論文を出版と同時にオープンアクセスにすることができます。

オープンアクセス出版を行うジャーナルの中には、APCの収益を目的とした粗悪な学術誌(いわゆる「ハゲタカジャーナル」)も存在しますので十分にご注意ください。

オープンアクセス誌 ― 投稿先の検討

論文の投稿先を検討する場合の参考情報として、データベース「Web of Science」をご利用下さい。ジャーナル単位でオープンアクセスかどうかを確認することができます。
Web of Scienceでは、データベースに収録された論文等の引用データにもとづき算出された学術雑誌に関する統計情報や評価指標が提供されています。

APCの割引

京都大学の所属者はAPCの割引を受けられる場合があります。投稿手続きの前に、割引があるジャーナルかどうかご確認ください。

APC支出状況

京都大学におけるAPC支出状況の調査を行い、その報告書を公開しました。

もっと詳しく

1. オープンアクセスの背景

「オープンアクセス」は大手商業出版社による学術雑誌の寡占状況及び価格高騰(シリアルズ・クライシス)に対する対抗運動として、1990年代後半頃から発展しました。2002年に設立され、オープンアクセスに関する代表的な定義として知られる「ブダペスト・オープンアクセス・イニシアティブ(Budapest Open Access Initiative)」では次のように定義されています。

By “open access” to this literature, we mean its free availability on the public internet, permitting any users to read, download, copy, distribute, print, search, or link to the full texts of these articles, crawl them for indexing, pass them as data to software, or use them for any other lawful purpose, without financial, legal, or technical barriers other than those inseparable from gaining access to the internet itself. The only constraint on reproduction and distribution, and the only role for copyright in this domain, should be to give authors control over the integrity of their work and the right to be properly acknowledged and cited.

Budapest Open Access Initiative (BOAI) 2002
http://www.budapestopenaccessinitiative.org/read

[ピアレビューされた研究文献]への「オープンアクセス」とは、それらの文献が、公衆に開かれたインターネット上において無料で利用可能であり、閲覧、ダウンロード、コピー、配布、印刷、検索、論文フルテキストへのリンク、インデクシングのためのクローリング、ソフトウェアへデータとして取り込み、その他合法的目的のための利用が、インターネット自体へのアクセスと不可分の障壁以外の、財政的、法的また技術的障壁なしに、誰にでも許可されることを意味する。複製と配布に対する唯一の制約、すなわち著作権が持つ唯一の役割は、著者に対して、その著作の同一性保持に対するコントロールと、寄与の事実への承認と引用とが正当になされる権利とを与えることであるべきである。

「ブダペスト・オープンアクセス・イニシアティヴから10年:デフォルト値を「オープン」に」
https://www.budapestopenaccessinitiative.org/boai10/japanese-translation/

2. オープンアクセスの制度化に関する国内の展開

世界的なオープンアクセスの潮流に対応し、日本では2010年代を通して、政策形成、政府・研究助成機関・研究機関等によるポリシー策定が進みました。

2-1. 政策動向
  • 学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について(2012(平成24)年7月)
    (文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会)
    https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/1323857.htm
    ⇒「研究成果のオープンアクセス化」の推進に対応すること、「機関リポジトリ」をオープンアクセス化のための重要な手段として位置づけ整備・充実を図ること、などが明記されています。
  • 学術情報のオープン化の推進について(審議まとめ)(2016(平成28)年2月)
    (文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会学術情報委員会)
    https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/036/houkoku/1368803.htm
    ⇒大学等に期待される取組として、「機関リポジトリ」をグリーンOAの基盤として更に拡充すること、オープンアクセスに係る方針を定め公表すること、などが明記されています。
2-2. オープンアクセスポリシーの策定

これらの政策文書を受けて、政府・研究助成機関等でオープンアクセスポリシーの策定が進みました。

  • 学位規則の一部を改正する省令(平成25年文部科学省令第5号)の施行について
    https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakuin/detail/1331790.htm
    ⇒2013(平成25)年4月以降に博士の学位を授与された者は、原則として「機関リポジトリ」で博士学位論文をインターネット公表することが義務化されました。
  • 独立行政法人日本学術振興会の事業における論文のオープンアクセス化に関する実施方針(2017(平成29)年3月)
    https://www.jsps.go.jp/file/storage/general/data/Open_access.pdf
    ⇒科研費をはじめ日本学術振興会の交付する研究資金による研究成果論文は、機関リポジトリ等を活用して原則オープンアクセス化することが定められました。
  • オープンサイエンス促進に向けた研究成果の取扱いに関するJSTの基本方針ガイドライン(2017(平成29)年4月施行、2022(令和4)年4月改定)
    https://www.jst.go.jp/pr/intro/openscience/guideline_openscience_r4.pdf
    ⇒科学技術振興機構(JST)の研究資金による全ての研究成果論文を、原則としてオープンアクセスの対象にすることが定められました。また、2022(令和4)年4月の改定により、データマネジメントプラン(DMP)に基づく研究データの適切な保存・管理と、研究成果論文のエビデンスとなる研究データの原則公開が定められました。
2-3. 大学等研究機関によるオープンアクセス方針の策定

大学等研究機関でも研究成果論文のオープンアクセス化を義務、または推奨する方針の策定が進みました。京都大学は2015(平成27)年に、日本の大学として初めてオープンアクセスの義務化を定めた方針を策定しました。2023(令和5)年2月現在、50以上の大学等研究機関でオープンアクセス方針が策定されています。

3. オープンアクセスに関する最新の動向

2010年代末以降、従来のオープンアクセスに研究データのオープン化を加えた「オープンサイエンス」の推進や、APCの負担増をはじめとしたオープンアクセスの普及に伴う課題への対応に関わる取り組みが国内外で活発化しています。

3-1. 国内の政策動向
  • 我が国の学術情報流通における課題への対応について(審議まとめ)(2021(令和3)年2月)
    (文部科学省科学技術・学術審議会・情報委員会・ジャーナル問題検討部会)
    https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu29/001/mext_00650.html
    ⇒学術誌の費用負担、APCの負担増などオープンアクセス・ジャーナルに対する総合的な対応方策を検討するため、2019(令和元)年に文部科学省科学技術・学術審議会情報委員会のもとに「ジャーナル問題検討部会」が設置されました。10回の審議を経て、「ビッグディール契約等の購読経費とAPCの最適化が、我が国が対応すべき最重要課題である」ことなどを指摘した審議まとめが作成されました。
  • 内閣府「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(2021(令和3)年3月26日閣議決定)
    https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index6.html
    「第5期科学技術基本計画」(2016(平成28)~2020(平成32)年度)に引き続き「オープンサイエンスの推進」への言及があり、「第2章 2.(2) 新たな研究システムの構築(オープンサイエンスとデータ駆動型研究等の推進) 」でその方針を示しています。同計画の実行計画に位置づけられる「統合イノベーション戦略」の下で、大学・研究機関はデータポリシーの策定等に取り組んでいます。
  • 統合イノベーション戦略2023(2023(令和5)年6月9日閣議決定)
    https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/2023.html
    ⇒第1章 1. (2)「知の基盤(研究力)と人材育成の強化」において、「学術論文等のオープンアクセス化の推進」に関する方針が示され、「我が国の競争的研究費制度における2025年度新規公募分からの学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた国の方針を策定する」ことなどが明記されています。
  • new 学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針(2024(令和6)年2月16日統合イノベーション戦略推進会議決定)
    https://www8.cao.go.jp/cstp/oa_240216.pdf
    ⇒「公的資金のうち2025年度から新たに公募を行う即時オープンアクセスの対象となる競争的研究費を受給する者(法人を含む)に対し、該当する競争的研究費による学術論文及び根拠データの学術雑誌への掲載後、即時に機関リポジトリ等の情報基盤への掲載を義務づける」ことなどが明記されています。
3-2. 海外の動向
4. 参考資料
  • 京都大学研究データ管理・公開支援
    https://www.rdm.kyoto-u.ac.jp/
    ⇒「研究データのオープン化」に関する京都大学、および京都大学図書館機構の取り組みはこちらをご覧ください。
  • オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)
    https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/
    ⇒2017年4月にリポジトリを通じた知の発信システムの構築する組織として設立され、リポジトリコミュニティの強化やオープンアクセス・オープンサイエンスの推進に取り組んでいます。ウェブサイト内で、国内のオープンサイエンスに関する政策文書等の主要なドキュメントをまとめたページとして「オープンサイエンス関連の基本ドキュメント」を提供しています。
  • 国立情報学研究所オープンサイエンス基盤研究センター(RCOS)
    https://rcos.nii.ac.jp/
    ⇒2016年7月に、世界的なオープンサイエンスの気運を受け、そのインフラとなる学術基盤を開発・運営するために、国立情報学研究所(NII)内に設置されました。ウェブサイト内で、オープンサイエンスに関する国内外の政策動向をまとめたページとして「オープンサイエンス政策動向」を提供しています。
  • カレントアウェアネス・ポータル(国立国会図書館)
    https://current.ndl.go.jp/
    ⇒図書館界、図書館情報学の最新情報を提供する国立国会図書館運営のウェブサイトです。「オープンアクセス」「学術情報流通」などのテーマについて、国内外の最新動向がしばしばとりあげられています。