2018年度成果
概要
2018年も昨年に引き続き、京都大学重点戦略アクションプランオープンアクセス推進事業を進めた。 京都大学貴重資料デジタルアーカイブの正式公開から1年経過したことから、利用状況の分析を行った。 利用状況の分析を行う過程で、新たな分析手法、分析結果の可視化手法の開発も行った。 また、慶應義塾大学メディアセンターとともに、富士川文庫デジタル連携プロジェクトを開始した。 富士川文庫デジタル連携プロジェクト試行版を9月に公開した。 2018年の新たな取り組みとして、オープン・サイテーションが挙げられる。 オープン・サイテーションで中心的な役割を果たしているI4OC(Initiative for Open Citations)の活動について情報収集を行うとともに、東南アジアに関する文献を対象とした実装に取り組み始めた。 研究データ管理についても欧米の事例を主として情報収集を行い、米・カリフォルニア州の研究データ管理についての動向を研究開発室セミナーで共有した。 昨年に引き続き、全学共通科目「大学図書館の活用と情報探索」を開講し、全学共通科目「情報基礎演習」に協力した。 さらに、今年度から大学院共通科目「学術研究のための情報リテラシー基礎」を開講し、大学院生向けに学術情報の探索方法、利用方法について講義を行っている。
成果
(参考)2018年度活動計画
1A)オープンアクセス推進
- 2018年度〜2019年度東南アジア地域研究研究所「東南アジア研究の国際共同研究拠点」共同研究「東南アジア地域研究資料のオープン・サイエンス化に向けたとりくみ」(代表者:佐藤翔・同志社大学准教授)において、引用データと図書館の蔵書に関する研究プロジェクトを開始した。 このプロジェクトは東南アジア地域研究資料のオープンサイエンス化に向けた実験的な試みを公開することによって、東南アジア研究における資料活用の新たな展望を示す。具体的には、このプロジェクトの前身である科研費のプロジェクトの過程で作成された①東南アジア研究関係の引用データ、②図書館所蔵データを公開する。
- 2018年度〜2019年度東南アジア地域研究研究所「東南アジア研究の国際共同研究拠点」共同研究「東南アジア地域研究資料のオープン・サイエンス化に向けたとりくみ」(代表者:佐藤翔・同志社大学准教授)
- (関連プロジェクト)2015年度〜2017年科研費挑戦的萌芽研究「実証的循環型コレクションモデルの創出による研究図書館の危機打開」(代表者:北村由美)
- 2019年度京都大学図書館機構講演会「オープン・サイテーションと機関リポジトリの展開」の企画を開始
- 上記のイベントに関連して、「I4OC関係者との意見交換会」の企画を開始
- デジタル教材配信システムにおける図書館コンテンツ推薦システムの研究開発を実施した。
- Nishioka, C., & Ogata, H. (2018). Research Paper Recommender System for University Students on the E-Book System. In Proceedings of the 18th ACM/IEEE on Joint Conference on Digital Libraries (pp. 369-370). https://doi.org/10.1145/3197026.3203882
- 久徳泰知, 西岡千文, 緒方広明. (2019). 学生向け論文推薦システムにおける説明インタフェースの評価. 情報処理学会研究報告: 教育学習支援情報システム(CLE), 2019(22), 1-8. http://id.nii.ac.jp/1001/00195298/
- 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ利用状況の分析を行った。国際的な画像データ配信の規格であるIIIF(International Image Interoperability Framework)を利用してデジタルアーカイブを運用している。 利用状況の統計値として、ページ数は月間20万〜30万前後、ヒット数は月間300万〜500万前後で推移していることが明らかとなった。 訪問回数・訪問者数についても、試験公開時と比較すると増加している。 また、約4割のアクセスが国外からであることが判明した。 デジタルアーカイブはIIIFの利点を活かして2種類の画像ビューワを提供しているが、どちらも同程度利用されていることが明らかとなった。 このことによって、IIIFにより利用者がそれぞれの目的・嗜好に応じてソフトウェアを選択できるようになったことを示した。
- 西岡千文. (2019). 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ利用状況報告 ー2017年10月4日〜2018年11月30日ー. http://hdl.handle.net/2433/237320
- IIIF(International Image Interoperability Framework)の「領域を指定して画像を呼び出す」という特性を利用した画像の利用状況の分析方法ならびに可視化方法の開発を行った。
- Chifumi Nishioka and Kiyonori Nagasaki. (2018). Visualizing which parts of IIIF images are looked by users. 2018 IIIF Conference. http://hdl.handle.net/2433/231939
- 西岡千文, 永崎研宣. (2018). IIIF画像の詳細な利用状況の把握に向けたログ解析手法. じんもんこん2018論文集, 335-342. http://id.nii.ac.jp/1001/00192396/
- 富士川文庫デジタル連携プロジェクト試行版サイトの公開した。
- 富士川文庫デジタル連携プロジェクト試行版
- 西岡千文. (2018). IIIFを利用した富士川文庫資料の再統合の試み. じんもんこん2018論文集, 291-296. http://id.nii.ac.jp/1001/00192389/
- 米国の大学図書館の研究データ管理・公開に関するサービスの調査報告を文献としてまとめた。
- 西岡千文. (2018). 北米におけるオープンアクセスと研究データ管理(国立大学図書館協会ビジョン推進事業調査報告). 第219回ku-librarians勉強会.
- 西岡千文, 杉田茂樹, & 山中節子. (2018). 米国におけるオープンアクセスと研究データ管理 ー国立大学図書館協会ビジョン推進事業調査報告ー. 大学図書館研究, 109, 2007. https://doi.org/10.20722/jcul.2007
- 京都大学重点戦略アクションプランオープンアクセス推進事業、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの取り組みについて学会等で広めた。
- 西岡千文. (2018). IIIFの解説と動向 ー画像データの国際的な相互利用促進を目指す枠組みー. 漢字文献情報処理研究, (18), 195-199. http://hdl.handle.net/2433/254138
- 西岡千文. (2018). 京都大学貴重資料デジタルアーカイブの紹介. 伝統鍼灸, 45(1), 36-42. http://hdl.handle.net/2433/234685
- Chifumi Nishioka, Akemi Omura, Fuko Hojo, Hisaya Akazawa, and Tatsuji Tomioka. (2018). Introduction to Kyoto University Rare Materials Digital Archive. 2018 IIIF Conference. http://hdl.handle.net/2433/231364
- 西岡千文. (2018). 京都大学貴重資料デジタルアーカイブの紹介 〜人文学の学術情報流通促進を目指して〜. 国際シンポジウム「デジタル時代における人文学の学術基盤をめぐって」.
- Nishioka, C. (2018). Promoting Open Access by the Kyoto University Library. 2018 7th International Congress on Advanced Applied Informatics (IIAI-AAI), pp. 462-465. https://doi.org/10.1109/IIAI-AAI.2018.00099
- その他
- 引原隆士. (2018). 京都大学図書館機構の戦略にかえて:過去/現在/未来. 平成30年度大学図書館シンポジウム「アジアトップ大学の図書館戦略」. https://julib.jp/sympo_event/symposium_2018
- 引原隆士. (2018). オープンアクセスへの道 これからの学術情報流通システムを考える. NII Today, vol. 82. https://www.nii.ac.jp/today/82/1.html
1B)コンテンツ活用・保存
- 人文研高麗大プロジェクトを推進した。 高麗大学校民族文化研究院、京都大学人文科学研究所主催、京都大学附属図書館共催で京大河合文庫目録刊行記念シンポジウムを開催した。 また、図書館機構貴重書公開展示を行った。
2)国際化
- 学習サポートデスクによる留学生支援、学修支援事業を実施した。
3)学術情報リテラシー教育・講習
- 情報基礎演習の教科書を執筆・公開した。
- 喜多一, 北村由美, 日置尋久, 酒井博之. (2018). 情報基礎演習 2018. http://hdl.handle.net/2433/235756
- 全学共通科目「大学図書館の活用と情報探索」を開講した。
- 大学院共通科目「学術研究のための情報リテラシー基礎」を開講した。
- その他
- 飯尾健, 溝口侑, 香西佳美, 大森俊典, 渡邊智也, 平山朋子, 小山理子, 松下佳代. (2018). メディア情報リテラシーのパフォーマンス評価の開発. 京都大学大学高等教育研究, 24, 91-94. http://hdl.handle.net/2433/241253
- 松下佳代, 斎藤有吾. (2019). 大学院生のための教育実践講座. 京都大学高等教育研究開発推進センター『CREHE Annual Report 2018], 12. http://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/annual_report/pdf/report2018.pdf
4)人材育成
- 研究開発室セミナー・講習会を実施した。
6)その他
- ラーニング・コモンズ「レクチャーシリーズ」を実施した。
- 学術研究支援室と連携を行った。