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附属図書館セレクション


京都大学附属図書館の特色ある貴重なコレクションの常設展示

(2005年6月〜2008年8月)

※現在、常設展示はしていません

第1回 幕末京都の尊攘堂セレクション
第2回 古地図セレクション
第3回 大惣本セレクション
第4回 日本の解剖のはじまり〜富士川本を中心に
第5回 西洋本の装丁セレクション
第6回 尊攘堂セレクション2
第7回 大惣本セレクション2 〜絵入り本〜

第8回 大惣本セレクション3 〜貸本屋大惣をめぐって〜

第9回 和漢古書の装訂セレクション

第10回 宮崎市定氏旧蔵地図セレクション(パネル展示)

第11回 和算の時代 数学力の原点 —塵劫記—

附属図書館は、図書館資料(図書)を約90万冊所蔵しています。 二階には、開架図書を約9万冊配置していますが、全体の10%程度に過ぎません。 残りの90%の蔵書は、地下書庫に収蔵しています。

これらの書庫内資料は、OPACなりカード目録で検索して、カウンターに請求し、 利用していただいていますので、この度、これらの書庫内資料から、 京都大学附属図書館の特色を示す貴重な資料で、社会的によく利用されているものを、 『附属図書館セレクション』として一定のテーマの下に常設展示することとしました。

約三ヶ月に一回のわりで内容を新しくして、一階の学生希望図書申込みコーナーにおいて、 常時京都大学附属図書館の貴重資料を紹介しました。

※2008年8月当時の図書館1階地図です。

※現在の図書館1階館内地図とは異なっています。

展示場所 :一階正面玄関を入って左へ

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第11回 和算の時代 数学力の原点 —塵劫記—

(2008年5月31日〜8月29日)

 

【塵劫記について】

吉田光由(1598−1672)の「塵劫記」は、日本人の数学力を飛躍的に高めるきっかけとなった、数学の初等教科書です。

寛永4年(1627)の初版から、たいへんな人気を博し、すぐに海賊版が多数出版されました。それに対抗するためもあって、著者の光由自身が何度か改訂版を出しています。

「塵劫記」には、九九・そろばん等の基本事項や、米の売買・利息計算・土地の面積計算など生活に即した様々な実用的問題に加えて、「継子立て」「ねずみ算」などの数学パズル的な問題も多く収録され、人気を呼びました。

光由が手を加えなくなった後も、「○○塵劫記」「塵劫記○○」といった類似書が江戸時代から明治時代にかけて300種以上も出版され、「ぢんこふき(塵劫記)」が数学そのものを意味するようになるほど、人々に親しまれました。

また、光由が最後に出版した寛永18年版(1641)には、あえて解答を載せない挑戦問題(これを遺題と呼びます)が12問掲載されました。この挑戦に応じた人が、解答と新たに自分が考えた遺題を本にして出版しました。これ以降、遺題に解答し、新たな遺題を提示するという形式が流行し、本格的な数学(和算)の発展に大きく寄与することになります。

「塵劫記」こそ、庶民の数学と高度な数学(和算)という二つの流れの源流であり、日本人の数学力を形作った書物なのです。

 

【展示資料】

 

1.新編塵劫記

     1冊 刊 正徳5年(1715)〈6−41/サ/174 960090〉

2.新編塵劫記 3巻

     1冊 刊 享保2年(1717)〈6−41/シ/26 367136〉

3.塵功記 (外題:初心早学近道改算記)

     1冊 刊 慶応2年(1866)新刻 〈6−41/チ/13 960196〉

4.塵劫記

     1冊 刊 〈6−41/チ/14 960212〉

5.ぢんかうき 巻1, 2

     2冊 刊 〈6−41/チ/10 367182〉 

6.新増懐寳塵劫記大全

     1冊 刊 天明2年(1782)〈6−41/シ/22 367132〉

7.当世塵劫記

     1冊 写 鈴木安明子貫著 〈6−41/ト/6 367195〉

8.童寳近道塵劫記九九水

     1冊 刊 延享2年(1745)〈6−41/チ/11 367183〉

9.大寳塵劫記

     1冊 刊 安永8年(1779)〈6−41/タ/9 960203〉

10.改算塵劫記 (外題:再刻改算塵劫記)

     1冊 刊 安永2年(1773)〈6−41/カ/35 960207〉

11.諸家日用大福塵劫記

     1冊 刊 〈6−41/タ/10 960200〉

12.新編ぢんかうき

     1冊 刊 〈6−41/チ/20 960063〉

13.新板ぢんかうき

     1冊 刊 〈6−41/チ/15 960208〉

14.新撰仕方塵劫記

     1冊 刊 明治5年(1872)〈6−41/シ/48 960202〉

15.早引塵劫記 初編 

     1冊 刊 文化10年(1813)〈6−41/ハ/7 960204〉

16.當世ぢんこうき

     1冊 刊 鈴木安明子貫著 天明5年(1785)〈6−41/ト/5 367194〉

 


第10回 宮崎市定氏旧蔵地図セレクション(パネル展示)

(2008年2月18日〜5月29日)

 

 京都大学文学部の東洋史学教室を長年にわたって主宰し、『宮崎市定全集』全25巻の著者として知られる故宮崎市定名誉教授(1901年〜95年)は、地図史にも関心を持ち、第二次大戦直後の一時期には地理学講座の教授を兼担した。

  宮崎氏は、1936年から38年まで、文部省の在外研究員としてパリに滞在した際、ヨーロッパで出版された、アジア関係の厖大な古書を購入するかたわら、セーヌ街の銅版画専門店やセーヌ河岸の露店で、稀覯本の地図帖Atlasやハナレものの地図Mapを蒐集し、ご自慢の洋書や地図帖・地図には「宮崎氏滞欧採蒐書印」と刻した朱印を捺した。宮崎氏は、それらの地図を眺めて楽しむだけでなく、折にふれて地図を活用した緻密な論考を発表し、地図の変遷からみた東西交渉史論を展開した。

<当解説は、「近世の京都図と世界図」2001年京都大学附属図書館展示会(京都大学総合博物館開館記念協賛企画展)図録による>

  

パネル展示資料

1.エシュラー/ユーベリン 現代インド図  1513  440×570mm

2.メルカトル  アジア図  1595  460×540mm

3.オルテリウス  アジア図  [c1608]  390×530mm

4.サンソン アジア図  1650 440×590mm

5.サンソン アジア図  1669 440×600mm

6.プトレマイオス アジアVIII(東部アジア)図  1545 340×450mm

7.メルカトル/ホンディウス 中国図  1606 400×500mm

8.ヤンセン 中国図  1658 460×570mm

9.ミュンスター アメリカ図  1550 300×390mm

10.テイセラ 日本図  1606 480×530mm

11.ブリート 日本帝国図  17世紀中期 430×570mm

12.ヤンセン 日本および蝦夷図  1658 480×590mm


第9回 和漢古書の装訂セレクション

(2007年11月1日〜2008年2月14日)

 

11月1日からは、和漢古書のいろいろな装訂(書物の製本の仕方)の本を展示します。古典籍の装訂は巻子本、帖装本、冊子本に分けられます。巻子装、折本装、粘葉装、列帖装、袋綴装(各種)などの代表的な装訂、美しい装訂の光悦本の複製、保存箱などをご紹介します。

  

1.袋綴(ふくろとじ)

文字面を外側にして縦に二つ折した料紙を重ね、折目の反対側の綴代部分を紙縒(こより)で下綴をする。それに表・裏表紙をつけ、右側に綴穴をあけ、糸を背に回しながら綴じたもの。この装訂は中国明代にさかんに行われ日本に伝わった。日本・中国では綴穴を四ヶ所にするのが普通である。和書の代表的な装訂。線装ともいう。

 展示資料:「南總里見八犬傳」 1814-1842年(文化11-天保13)

         4-41/ナ/1

 

2.明朝綴(みんちょうとじ)

袋綴本の綴じ方の一種で、明代に盛んに用いられたので、この名称がついている。四つ目綴ともいわれている。綴穴は四つ目で最上と最下の二穴の間にある穴の間隔はそれぞれ等分なものや、中央の二穴の間隔が狭いものもある。四つ目綴ともいう。

 展示資料:「繹史」 1667年(清 康煕6) 5-42/エ/1

 

3.康煕綴(こうきとじ)

明朝綴の変形で、名称は中国清代の康煕年間に流行したことによる。最上と最下の部分の綴代に、もう一つずつ穴をあけて六つ目にして糸を通したもの。角のまくれを保護するために考えられた。

 展示資料:[木査][竹かんむりに考]書屋図書目録 1927(昭和2)

               4-49/サ/7

 

4.朝鮮綴(ちょうせんとじ)

袋綴本の綴じ方の一種で、朝鮮本に多くみられるので、この名称がついている。五つ目綴ともいわれている。綴穴は五つ目で最上と最下の二穴の間にある三穴は等間隔である。大型本に用いて、綴糸は太い赤や青の糸が使われた。

 展示資料:「忠烈[ネ司]誌」5-46/チ/26

 

5.光悦本(こうえつぼん)

慶長期後半から、角倉素庵が本阿弥光悦の協力を得て刊行した私家本を嵯峨本というが、その中でも版下が光悦の筆によるものを光悦本とも呼ばれている。表紙の色の変化や版本には珍しく厚葉鳥子紙を用い、有色紙をも混用した料紙の重厚さがある。何よりも雲母模様が有名で、種類は200種を超えているという。

 展示資料:「光悦謡本実盛・熊野・猩々:東洋文庫蔵(複刻版)」        1972年(昭和47) 4-21/別ニ/2(13)

 

6.巻子本(かんすぼん)

巻末から料紙を横に長く継ぎ合わせ、巻末に軸があり、巻首には表紙と押え竹に付けられた巻紐がある。巻末の軸に料紙を巻き込んで巻紐で留めたもの。巻物。日本の書籍の中で最も古い形態であるといわれている。

 展示資料:「平治物語繒詞信西の巻」 1919年(大正8) 8-44/巻別/2

 

7.紙本梵筴装(かみほんぼんきょうそう)

インドの「梵筴装」とはターラ樹の葉に経文を彫り、その上に墨色の染料で文字を鮮明にした数葉を重ね、上下に板を付けて、1〜2箇所の穴をあけて、紐を通したものである。

この「梵筴装」の装訂が周辺諸国に及び、厚紙に書写した「紙本梵筴装」の資料が多く発見されている。この「梵筴装」の形態が巻子本から折本への発想に影響したともいわれている。

 展示資料:「蔵文蔵経」1-23/別

 

8.折本(おりほん)

横に長く継いだ料紙を一定の幅で折り畳み、表表紙と裏表紙をつけたもの。帖装本(じょうそうぼん)ともいう。

 展示資料:「金剛壽命陀羅尼經」 1846年(弘化3) 1-23/別コ/1

 

9.特小本(とくこほん)

豆本(まめほん)・寸珍本(すんちんぼん)・袖珍本(しゅうちんぼん)とも呼ばれている。

小本(現在の文庫本とほぼ同じ大きさ)よりも小さい本すべてを特小本という。

 展示資料:「王陽明文瓸」 1880年(明治13) 4-05/小別オ/1

        「袖珎韻要」 1748年(延享5) 4-06/小別シ

 

10.指蓋箱(さしふたはこ)

保存箱の一種で、冊子形態に合わせて作成された一種一函の箱である。保存箱は光による材質劣化、塵埃による汚損を防ぐ。また木材の箱は木の吸放湿機能により箱内の湿度変化を小さく押える効果がある。

 展示資料:「東海道中膝栗毛」 1802-1822年(享和2-文政5)

         4-43/ト/3

 

11.板帙(いたちつ)

二枚の板で書物を挟んで保護する。板の四箇所に穴をあけ、紐を通し、書物を挟んだ後に小口側で紐を結ぶ。帙の裏面の紐のあたる部分は本の損傷を防ぐため、板を浅く彫られている。夾板(きょうばん)ともいう。

 展示資料:「康煕字典」 1827年(清 道光7) 4-86/コ/2

 

12.列帖装(れつじょうそう/れっちょうそう)

綴葉装(てつようそう/てっちょうそう)とも呼ばれている。まず料紙を数枚重ね、縦に中央から二つ折り、それを幾折か重ねる。各折の折目に外側から3ミリ程度、刃物で切込んで、上下各二箇所綴穴をあけ、前後に表紙を付け、糸で綴じたもの。両面書写が可能なので、厚手の鳥子紙が使われる。物語や和歌作品に多く用いられた。

この装訂は江戸時代に、「大和閉」(大和綴)と認識されていたことを示す史料がある。

 展示資料:「新古今和歌集:文化庁蔵冷泉為相本(複刻版)」 1980年        (昭和55) 4-21/別ニ/2(47)

 

13.粘葉装(でっちょうそう)

料紙の文字面を表にして、一枚ずつ表を内側にして二つ折りにし、外側の折り目の部分を背にし、5ミリ幅ぐらいで糊付けして重ねたもの。この形が蝶が羽を広げたように見えるので、中国では胡蝶装(こちょうそう)と言われる。冊子本の最初の装訂といわれる。仏書・古写本に多く見られる。

 展示資料:「道濟集:前田家等蔵(複製)」 1935年(昭和10)

         4-23/ト/13

 

14.結び綴(むすびとじ)

現在では大和綴(やまととじ)とも呼ばれている。料紙に表と裏の表紙を加えて、表紙の右側に上下各二箇所綴穴をあけ、上二つ、下二つそれぞれを紐または数本の糸で結び、飾り綴じをしたもの。平安時代から行われていた。

 展示資料:「吉田松陰手翰」 1884年(明治17) 4-09/ヨ/1

 

15.掛軸(かけじく)

書画を掛けて鑑賞などをするための掛物。縦長に表装されたものが多い。巻いて保存する。

 展示資料:「明和劇場圖中村座」 8-66/巻別

 



第8回 大惣本セレクション(3)〜貸本屋大惣をめぐって〜


(2007年8月9日〜10月30日)

8月9日からの第8回附属図書館セレクションでは、前回にひき続き、当館所蔵本の中から、 江戸中期明和年間から明治32年ごろまで名古屋で貸本業を営んでいた大野屋惣八店(通称「大惣」)の旧蔵書をとりあげます。 今回は貸本屋大惣をめぐる読者や貸本の様子、大惣のまわりに位置していた作者集団などに焦点を当て、大惣本を展示します。

 展示品一覧品一覧

1.梅屋渋浮名色揚(ウメヤシブウキナノイロアゲ)

松田和吉作  書肆・刊年不明
※はじめの2丁は「薬売小梅の昔」と題する八行の正本。
 第3丁から七行の「梅屋渋浮名色揚 松田吉作」で、通しの丁附があり、全部53丁。
 見返しに彩色の人物画あり。題簽に「クスリウリウメノコハル」と書込みあり。

請求記号:4-28 マ 29 (31757)
2.おさん茂兵衛宗像暦(オサンモヘエムナカタゴヨミ) 一〜四・四下・五・六
ちぬ平魚著・自序、一峰齋馬円画 文化11(1814)刊
江戸 鶴屋金助(田所町)・西宮彌兵衛(中橋広小路町)、 大坂 和泉屋善兵衛(堺筋備後町)・文栄堂河内屋嘉七(心斎橋通北久宝寺町)
※書名は見返しの内題による。原題簽「文化新板宗像暦」。
 柱書「胸肩暦」。見返しに「書林 文栄堂 栄泉堂」とある。
 見返しに「改、古」等の印がおしてある。序のあと本文の前に書林の広告あり。
 巻末にも書林の広告あり。第3冊の見返し・裏表紙見返しに大惣を宣伝する書込みあり。

請求記号:4-41 ア 99 (30540)
3.河東方言 箱まくら(カトウハウゲンハコマクラ) 上・中・下
大極堂有長著・自序・自跋、無着舎主人序、兎鹿齋
題言(中冊)、春川五七画 文政5(1822)自序・序・刊
江戸 山嵜屋平八、大坂 河内屋茂兵衛、京 近江屋治助(三条通柳馬場西へ入町)・山城屋佐兵衛(蛸薬師通高倉西へ入町)
※洒落本。 美艶香の広告札あり。

請求記号:4-43 カ 34 (30435)
4.出定笑語(シュツヂャウセウゴ)  壹〜七
平田篤胤著、従五位上近江守都下朝臣資政序、大野屋惣八写
 嘉永2(1849)序、同4(1851)写 写本
※序によれば、延享のころ冨長仲基が著した『出定後語』という仏道を論じた書に共鳴して、
 篤胤が「それに翁(ヲヂ)の論(アゲツラ)ひをもおほくそへてものしつるなり」という。
 翁とは、本居宣長。『国書総目録』によれば、別名「仏道大意」「大迷辨講本」。
 第7冊末尾に「活板出定笑語四巻今年平仮名に改め写して八巻とす此本を以て
 よみなば文字にうとき人もたやすく其意を解へしといふべし 嘉永四年辛亥孟春
 大野屋のあるじいふ」とあり。大惣の半紙を使用。
請求記号:1-20 シ 5 (30023)
5.公武栄枯物語(コウブエイコモノガタリ)  壹〜八
著者未詳、飯田隠序 元禄6(1693)序、同7(1694)刊
江戸 須原屋茂兵衛(日本橋南一丁目)、京 服部三大寺(堺町通竹屋町上ル橘町)
※序に著者は不明であること、承久の逆乱の顛末を記した書であることなどを記す。絵入り。

請求記号:5-07 コ 1(30729)
6.玄同放言(ゲンドウハウゲン) 一〜三・弐篇一〜三
蓑笠瀧澤翁(馬琴)著・鵬齋老人序    (正篇)文政元(1818)序・刊、(弐篇)同3(1820)刊
京 植村藤右衛門(堀川通高辻上ル町)、江戸 鶴屋喜右衛門(常盤橋御門外本町筋通油町)
※弐篇の内容に対する評言の書込み甚し。

請求記号:5-18 ケ 2(30110)
7.繪本實語教(エホンジツゴケウ)  上・中・下
北尾雪斎辰宣著・画
抱玉軒
※各絵に読者による色塗りあり。下冊末に抱玉軒の絵本類書目録を附す。

請求記号:8-44 エ 5 (30364)
8.三木章(サンボクシャウ) 一〜十
著者未詳  写本
※一〜十巻、題簽の書名の用字が1冊ずつ異なるが、上記の書名は第1冊題簽による。

請求記号:4-41 ア 49 (30933)
9.旅の友(タビノトモ)
見能著 写本
※大惣の半紙を使用。

請求記号:3−47 タ 8 (30895)
10.軽世界四十八手(ケイセイカイシジフハッテ)
椒芽田楽著・自序、大文字屋獨り息子序  寛政12(1800)序・成
写本(草稿本か)
※目録あり。絵入り。裏見返しに「書肆 蔦舎梓」とある。

請求記号:4-43 カ 3 (30312)
11.新織 意鈔(アラオリマヒイセウ)
椒芽田楽著・自序・自跋、満寿井豹恵序  寛政13(1801)序・跋
写本
※洒落本。原本振仮名は「まいゐせう」。
 題簽に「大のや惣八」と「客」の会話を記している。扉の絵に彩色を施す。

請求記号:4-43 カ 38 (30314)
12.天岩戸(アマノイハト)
旭亭主人著、埜見祐序、山西主人序、椒芽田楽序・画
寛政8(1796)序(埜見祐)、享和元(1801)序(田楽)  写本
※巻頭内題に「滑稽」と角書あり。巻末に山東京傳作と記す。

請求記号:4-43 カ 1 (30313)   
13.雙刀英勇談(サウタウエイユウダン) 巻之壹〜三
玉晴堂芝誘著・皎月堂楓溪画、一閑舎主人序、凹頭跋  文政11(1828)成・序・跋
写本
※匡郭は刷られているが、本文・画・題簽みな筆写。
 ただし、印はすべて実物の印。画には彩色を施す。
 第3冊末に本の広告や刊記「呉尾國柳城釼都問夜光街住 轡旭亭蔵板」が書かれており、
 あるいは版本の原稿か。

請求記号:4-41 ア 64 (30520)
14.風流甚目寺参詣之記(フウリウジンモクジサンケイノキ)
無陀亭(猿猴庵)著  文政5(1822)奥書  写本
※滑稽本。『国書総目録』によれば、一名「能知亭折助噺」。

請求記号:4-43 ア 24 (30310) 



第7回 大惣本セレクション(2)〜絵入り本〜


(2007年6月1日〜8月5日)



「画話耳鳥齋」より


今回は、江戸中期明和年間から明治32年ごろまで名古屋で貸本業を営んでいた大野屋惣八店(通称「大惣」)の旧蔵書である、大惣本のいくつかを紹介しています。
当館所蔵本の中から、絵入り本を中心として画譜・図譜・絵本等を展示しています。

展示品一覧

1.画話耳鳥齋(エバナシジチョウサイ)春・夏・秋・冬
松屋平太左衛門(耳鳥斎)著・自序,花癡道人序 天明2(1782)刊
京 八文字屋八左衛門(東洞院二条上ル町)
※春冊末に『画書水や空』、秋冊末に『慶子画譜』『華夷通商考拾遺』の近刊予告あり

請求記号:8-67エ1 (33352)
2.かつらかさね(カツラカサネ)  大1帙1冊
耳鳥斎画・風来山人序 享和3(1803)序・刊
大坂 河内屋喜兵衛・河内屋宗兵衛・今津屋辰三郎・塩屋忠兵衛
※表紙に「東」の小札あり。多色刷。闌更・四方山人らの句文をおさめる。

請求記号:8-44 カ 10 (33316)
3.繪本卯濃花賀沙(エホンウノハナガサ)
猿猴庵著・画・自跋 文政13跋(1830) 写本
※筆彩画あり。稿本。おかげ参りの記録。表紙の下書きが挿み込まれており、 そこには「画誌卯花笠」、「人なみにあたまかけたるほとゝぎす」の発句、 「かうりきのほん」と記されている。

請求記号:1-04 エ 1 (33395)
4.繪本竹濃春(エホンタケノハル)
猿猴庵著・画 文政13跋 写本
※筆彩画あり。稿本。冒頭に「ことし文政十三年」とある。豹の見せ物の記録。
 原表紙の上から表紙を改装。

請求記号:6-24 エ 1 (33394)
5.世直しぞうし(ヨナオシゾウシ)
猿猴庵著・画・自序 文政2成 写本
※稿本。序文中に「今茲文政二年己夘六月十二日の大地震」云々とある。

請求記号:5-19 ヨ 1 (33399)
6.三津扇仰向物語(ミツオウギアオムケモノガタリ)
東山家之隠士禁多楼著・自序、都鹿斎画 文政6(1823)成 写本
※滑稽本。「4-43 サ 12」の函に、黄表紙本多数と共に入る。
中本の基準よりわずかに大きい。「禁多楼」と「都鹿斎」は同一人か。
末尾に「此類書都鹿斎撰述戯作物目録」あり、4部の書名をしるしている。

請求記号:4-43 サ 12 (33397)
7.福善齋畫譜(フクゼンサイガフ)
藤彰甫画・自跋 (第1冊, 天明元(1781)),来山道人巣握固序 (第1冊,文化11(1814)),
石川安貞序 (第2冊, 天明元), 天放老人序 (第3冊, 天明元),
圖南居士跋 (第5冊, 天明元),鈴木朖跋 (第5冊) 天保11(1840)刊
※画はすべて多色刷。刊記は第4冊末にあり「天保庚子十年」とあるが庚子は十一年。
酔雪軒蔵

請求記号:8-44 フ 3 (33344)
8.北斎画式(ホクサイガシキ)
葛飾北斎画,景山處士序 文政元(1818)序,同2(1819)刊
江戸 須原屋茂兵衛(日本橋一丁目)・和泉屋庄治郎(浅草新寺町),
名古屋 永楽屋東四郎 (本町七丁目),
大坂 秋田屋太右衛門 (心斎橋安堂寺町),
京 伏見屋藤右衛門(堀川佛光寺)・和泉屋利兵衛 (三条通御幸町)
※朱・薄墨の彩色刷。

請求記号:8-44 ホ 1 (33319) 
9.名古屋町中梵天造物之圖(ナゴヤチョウジュウボンテンツクリモノノズ)
著者未詳 写本
※図のみ。表題横に「宝暦十三年癸未年」と記す。

請求記号:1-04 コ 3 (33396)
10.西遊旅譚(サイユウリョダン)
司馬江漢著・画、門人蘭江平民誌、福山太田方序、赤穂神□序
寛政2(1790)成、同6序
※江戸長崎往復の紀行画文。第5冊末に「春波楼蔵版目録」半丁を附す。

請求記号:5-85 セ 7 (33393)
11.扁額軌範(ヘンガクキハン)(初編)

合川珉和・北川春成画、櫟亭琴魚序、菅原雪臣跋

文政2(1819)序・刊
京 袋屋佐七(二條通麩屋町東エ入町)
※巻末に「文集堂藏板書目」あり。
               扁額軌範(ヘンガクキハン)(二編) 壹〜五
速水春暁斎編、北川春成画、湯浅経邦序 文政4(1821)序・刊
京 袋屋佐七(御幸町二条上ル)・吉田屋新兵衛(三条柳馬場東)・
植村藤右衛門(堀川高辻上ル)、大阪 河内屋太助(心斎橋唐物町)、
江戸 角丸屋甚助(麹町平河町二町目)
※第5冊は「附録」。巻末に「文集堂藏板書目」あり。

請求記号:8-44 ヘ 3 (33282)

12.錦心綉口 珎画譜(キンシンシュウコウチンガフ) 上・中・下
一龍子著・自序,花耕山人画   宝暦6(1756)序,同7(1757)刊
京 小佐治半七・梶川七郎兵衛・河南四郎右衛門・同四郎兵衛
※部分的に筆彩。刊記部分に『風雅百女傳』の近日刊行予告あり。

請求記号:4-25チ4 (33351)
13.百さへづり(モモサヘヅリ)
後巴人亭光編・自序、華溪老人「書」 寛政8(1796)序・奥書
江戸 蔦屋重三郎(通油町南側)
※狂歌集。多色刷の絵入り。

請求記号:4-25 モ 2 (33310)
14.貝譜浦之錦カイフウラノニシキ)上下
大枝流芳著・自序・自跋 寛延2(1749)序・跋 同4刊
江戸 西村源六(通本町三丁目)、大坂 渋川清右衛門(心斎橋順慶町)・
伊和惣兵衛(南新町壱丁目)
※原題?「貝盡浦の錦」。序題「介譜浦之錦」。上冊表紙に「品」の小札あり。

請求記号:8-61 カ 2 (33391)



第6回 尊攘堂セレクション2


(2006年8月8日〜10月30日)

8月8日からの第6回附属図書館セレクションは、「尊攘堂セレクション2」と題して、維新特別資料文庫に収集されている幕末の志士たちの墨蹟や遺品などを展示します。この文庫は、吉田松陰の遺志に基づいて品川弥二郎子爵が創設した「尊攘堂」旧蔵の維新資料で、単に長州出身者にとどまらず、地域的にも階級的にも広く網羅的に収集されています。今回は第1回「幕末京都の尊攘堂セレクション」に続く第2弾としての展示です。

(期間中、一部展示品の入替を予定しています)

 

展示品
1. 大原重徳筆「尊攘」   掛軸  展示期間 8/7〜8/31
2. 〔吉田〕松陰先生肖像 掛軸  展示期間 9/1〜11/30(予定)
3. 上杉謙信肖像      掛軸  展示期間 8/7〜10/1
4. 中江藤樹画像      掛軸  展示期間 10/2〜11/30(予定)
5. 尊攘堂目録                  
6. 志のふ草(尊攘堂見学者名簿)     
7. 長門国赤間関奇兵隊桜山神社招魂場名簿 
8. 吉田松陰留魂録 写真版複製 
9. 竹尺 (品川弥二郎所持) 
10.佐久間象山地震計   

   

          

 


第5回 西洋本の装丁セレクション

(2006年6月1日〜2006年8月6日)

今回(6月1日〜8月6日展示)はヨーロッパのいろいろな装丁(書物の外観に関する体裁デザイン)の本を展示しています。
書物の製本技術は紙漉きの伝播と活版印刷術の発明により発達し、16 世紀にはほぼ完成しました。
それ以後、製本師たちは装丁に力を注ぎました。
今回は附属図書館所蔵の旭江文庫(大賀寿吉氏寄贈のダンテコレクション)の装丁本を中心に、表紙・小口・見返し(表紙と裏表紙の次に糊付けされ、加えられた紙葉)などの装丁をご紹介します。
最近では工芸製本などの手製の本づくりの輪も広がっています。この工芸製本作品やマーブル紙を使った本なども紹介しています。

   

 

西洋の製本・装丁簡略史

■古代・中世

 書物の形態は紀元前から存在していたパピルスや羊皮紙の巻物から、冊子体(紀元1世紀頃発生)に移り、冊子体が一般的になったのは紀元4世紀後半である。製本の技術はヨーロッパの修道院から生まれ、豪華な装飾写本の数々が製作された。

■15世紀

 紙漉きの伝播と活版印刷術の発明により、インキュナブラ(揺籃期本
)が出版されるようになり、製本の需要が増える。製本技術は革による
表装、綴じ方は本の背に支持体を用いる方法で、支持体が本の背に突起を形成する『背バンドとじ』が現れる。

■16世紀

 書物工芸のルネサンスがイタリアから始まり、フランス・イギリスに
及ぶ。革表紙に型押し・金箔押しによる装丁が始まる。ドイツではルレ
ット(回転式箔押し器具)による空押しの縁どりと、中央に装飾を施し
た装丁が始まる。また図書の背にも装飾が施されだした。綴じ方は本の背に支持体を埋め込む『かがりとじ』が行われる。

■17・18世紀

 洋装製本は、技術的には16世紀でほぼ完成し、この後は装丁・デザインが洗練されてゆく。素材としてモロッコ革(山羊革)の使用が定着し、天・小口の金箔はりも行われるようになる。また17世紀後半にはマーブル紙の見返しが使われ始める。

 18世紀、フランスではレース模様の金箔縁どりがされた赤いモロッコ
革の書物が多く製作された。また蔵書票がさかんに用いられるようになった。

■19・20世紀

 フランスでは18世紀末のフランス革命で中断していた古典的装丁が復活する。また半革装の本も多く作られる。

イギリスでは19世紀半ばから、産業革命で機械化が進むと、大量生産に向いている『くるみ製本』が多く行われるようになり版元製本を一般化した。一方、理想の書物を追求するウィリアム・モリスのケルムスコット・プレスが登場し、その後多くのプライベート・プレスが設立された。

 20世紀に入ると書物は大量生産され、ほとんどが版元製本(Publisher’s binding)となった。

参考資料:HP「早稲田大学図書館に見る西洋の歴史的装丁」

「西洋の書物」R. ストークス著

「西洋の書物工房」貴田庄著

「西洋書誌学入門」ジョン・カーター著

「英国の私家版」コリン・フランクリン著

 

マーブル 紙

 「マーブル模様」というのは大理石模様という意味であるが、一般的なマーブル紙の模様は、小石・櫛目・矢羽・孔雀などがある。マーブル紙の作り方は、ゴム溶液などに絵の具を浮かべ、紙を降ろし、その模様を紙に移しとってゆく。

 マーブル紙発生の地はいろいろな説があり定かではない。日本では平安時代から「墨流し」の技法で登場している。但し、書物にマーブル紙を使った最初の人々はペルシャ人のようである。

 1600年代にヨーロッパに広がってゆき、17世紀後半にはマーブル紙の見返しが使われ始め、18世紀から19世紀にかけては、半革装(half bound)・背革装(Quarter bound)の表紙材料としてよく使われていた。


旭江文庫

 
旭江文庫(2671冊)はイタリアの詩人Dante Alighieri (1265-1321)の著作・研究書などのコレクションである。このコレクションを寄贈したのは、ダンテ研究家の大賀寿吉氏(1870-1937)で、大賀氏の号が出身地である岡山の旭川に因んだ「旭江」であることから、旭江文庫と名づけられた。

  コレクションの内容は、16−20世紀初頭にかけて各国で出版されたダンテの作品(原典と翻訳)約600点とダンテに関する研究書・参考図書・逐次刊行物などである。その体系的構成は見事であり、稀覯書も多数ある。書誌学的にも貴重な資料群となっている。

用語解説

■見返し

  製本された本の表・裏表紙を開いてすぐのところにある紙の総称。
  片面は表・裏表紙の裏面に糊付けされている。

■花切れ

  本の背表紙と本文の背との間の上下端についている端布をいう。
  元は本の補強のために絹や麻で編んで縫いつけていたが、現在では装飾にすぎなくなった。 

■小口

  本の背を除いた三方をいう。
  天(上)・地(下)・前小口の総称。

■天金

  天小口のみ金箔をおいた製本。

■三方金

  天・地・前小口の三方に金箔をおいた製本。

■ヴェラム(又はパーチメント)
  羊・山羊・子牛の皮より鞣製された製本材料。
  パーチメントはヴェラムと同様の方法で羊皮から作られ、書写材料にも使われた。羊皮紙と呼ばれている。


参考:八木佐吉編著『書物語辞典』




第4回 日本の解剖のはじまり〜富士川本を中心に

(2006年3月1日〜2006年5月30日)

富士川文庫について

富士川文庫は医学博士、文学博士の故富士川游(ふじかわ ゆう, 1865-1940)氏の旧蔵書9,017冊が、大正9年以降三期に分かれて本館に寄贈されたものです。『日本医学史』(1904年刊)編纂のために収集された、明治以前の和漢医書と江戸中期以降主として幕末期の西洋医学書の翻訳書で構成されています。

著作年代は平安期から明治初期にわたり、内科、外科、産科、小児科、薬学等医学の幅広い分野を包摂していますが、医学史編述のための参考資料という収書目的が反映された、学術的典籍の系統的なコレクションであるのが特長です。

鎌倉期の代表的医書である梶原性全の著作『頓医抄』50巻のうち、伊沢蘭軒自筆の巻5-12、慶安2年刊の曲直瀬道三著『啓迪集』8巻など、稀覯書として特筆すべき資料も多数含んでおり、和漢医学及び日本医学史を研究する上できわめて重要なコレクションとして知られ、学外の利用が最も多い貴重資料群の一つです。

展示棚(左)
展示棚(右)
 
 
啓迪集
(けいてき
しゅう)

臧志
(ぞうし)
外科訓蒙図彙
(げかきん
もうずい)
解屍編
(かいしへん)
施薬院
解男体図
(せやくいん
かいなんたいず)
解体発蒙
(かいたい
はつもう)
 
 
 
 
 
ターヘル・
アナトミア
(オランダ
語訳)
解体新書
初版
重訂
解体新書
(銅版全図)
重訂
解体新書
 
 
 

第3回 大惣本セレクション

(2005年12月1日〜2006年2月27日)

大惣本について

明和4(1767)年から明治32(1899)年まで、名古屋長島町で営業していた、通称大野屋惣八(大惣)、屋号を湖月堂と称した貸本屋の旧蔵書である。大惣主人の代々の好書癖と、所蔵の書物を決して他に転売しないという家法のため、蔵書構成が一般の貸本屋のものとは異質でかつ網羅的であるため、名古屋市内はおろか江戸や京大阪の文人たちにまでその存在を知られていた。享和年中には、滝沢馬琴、文化年中には、十返舎一九が訪店し、明治以後も坪内逍遥をはじめ多くの文化人が来店した記録がある。

京都大学では、廃業により売却されたものを、図書館開館前の明治32年4月に3,673部13,094冊を購入しており、京大創立期購入集書として最初に指を屈すべきものである。他に同時期に東大図書館、上野の帝国図書館、東京高等師範学校が相当まとまった量を購入している。あらゆる分野のものが網羅されているが、中でも浮世草子、歌舞伎、浄瑠璃の脚本、読本、俳諧書などの江戸文学書に質量共優れた物が多い。

参考文献:「廣庭基介:京大『大惣本』購入事情の考察」

  1. 安政見聞誌
    (アンセイケンモンシ)
  2. 福聚奇遇玉照物語
    (フクジュキグウタマテルモノガタリ)
  3. 夏祭浪花鑑
    (ナツマツリナニハカガミ)
  4. うらみのすけ
    (ウラミノスケ)
  5. くせものがたり
    (クセモノガタリ)
  6. 日蓮大聖人御傳記
    (ニチレンダイシャウニンゴデンキ)
  7. 繒入本朝智恵鑑
    (エイリホンテウチエカガミ)
  8. 海外實録
    (カイグワイジツロク)
  9. 砂糖製作記
    (サタウセイサクキ)
  10. 蠶飼絹篩大成
    (コガヒキヌブルヒタイセイ)

第2回 古地図セレクション

(2005年9月1日〜11月29日)

  1. デスノ「アジア図」(1772年) 
    18世紀も末になると、アジア大陸の描出も、ほとんどの地域で実情を反映するものとなり、現代の見なれた地図にちかづく。そのなかにあって、内奥地帯をのぞくと、最大の未完成部分が日本、つまりヨーロッパからみて「極東」の北方海域であった。図では、カムチャッカ半島と北部半島は姿をみせているが、南千島、北海道、サハリンの相互関係と形態が依然として現実とはかけ離れている。
    この地図は、アジア各地の住民とその習俗の説明を、挿し絵入りで額縁のように周囲に配している。とりあげられている住民の主なものを左上から時計まわりにとりあげると、中国、日本、(オスマン)トルコ、インド、タタール、フィリピン、アラビア、アルメニア、ゴルコンダ、マレー、シャム、コーチシナなどである。
  2. 円通「須弥山儀図」(1813年)木版
    須弥山を中心とする仏教的な世界観は、近世以降も強い影響力をもち、ヨーロッパの天文学と世界図から新しい知識を摂取しながらも、仏教的な枠組みは堅持しようとした。そのような護法的な立場から活動した代表的な僧の一人が、本図を刊行した円通である。本図は、須弥山を中心とする円盤状の世界を示したものであり、盤上右下には南瞻部洲が描かれている。しかし本図の特色は、太陽と月の運行経路を時計の仕掛けを応用して示した模型、すなわち「須弥山儀」として世界を示しているところであり、ここにヨーロッパの天文学に対する彼の対応を見ることができる。
  3. 細見案内絵図京名所道乃枝折 文化七年(1810)
    南北を長く東西を短くした紙に、洛中を相対的に小さく、名所旧跡の多い洛外を広く描く。本図における寺社名所は、手前に西山をおき東方を望む鳥瞰図風に表現されている。両面刷りで裏面には「貝原翁の京廻り」にもとづき六日の巡覧地を記載する。
  4. 袖珍都細見之図 安永八年(1779)
    三条大橋から鞍馬山あたりまで鴨川東岸を中心として北上し、南に折れ、洛中の西半分や洛西の寺社を描いて宇治辺りまで至り、その後北上して東山の有名社寺を描いて三条大橋で終わる。道中図様式の携帯用案内図である。

第1回 幕末京都の尊攘堂セレクション

(2005年6月1日〜8月30日)

第一回目は、明治維新後に子爵品川弥二郎が全国の勤皇志士に手紙で呼びかけて収集し、四条高倉通にあった尊攘堂において展示した勤皇志士たちの墨跡などを中心としたコレクション「維新特別資料」(尊攘堂資料)から以下のような10点を展示します。
  1. 尊攘」の額
  2. 藤本鐵石書状
  3. 品川弥二郎が着用した「陣笠」
  4. 大久保利通が使用した「煙草盆
  5. 吉田松陰木像(複製版)
  6. 平野国臣が獄中で作成した「紙撚文書(手紙)」
  7. 長州藩の「奇兵隊日記
  8. 「奇兵隊日記」(複製版)
  9. 京都維新史跡写真帳
  10. 「及門録」

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