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KURENAI: 【特別インタビュー】附属図書館研究開発室・古賀崇准教授

 投稿日時:2009-03-03 (6145 ヒット)
2009年1月、京都大学附属図書館研究開発室の専任教員として、古賀崇准教授が着任されました。 このたび、京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI)で古賀先生の論文を公開しましたので、この機会に研究内容等についてインタビューさせていただきました。 ○Koga, Takashi. Government Information and Roles of Libraries and Archives: Recent Policy Issues in Japan. Progress in Informatics. No.1, Mar. 2005, p. 47-58. http://hdl.handle.net/2433/70382 ○Koga, Takashi. Innovation beyond Institutions: New Projects and Challenges for Government Information Service Institutions in Japan. World Library and Information Congress: 71st IFLA General Conference and Council. Oslo, Norway, Aug. 14-18, 2005. http://hdl.handle.net/2433/70380 ○Koga, Takashi. Policy Issues regarding Electronic Government and Web Accessibility in Japan. World Library and Information Congress: 72nd IFLA General Conference and Council. Seoul, Korea, Aug. 20-24, 2006. http://hdl.handle.net/2433/70381 ○古賀, 崇. 学術情報流通のグローバル化と政策課題: IFLA(国際図書館連盟)関連会議参加を通じて. 京都大学図書館機構平成20年度第3回講演会「図書館の目指す先に見えるもの−図書館の未来戦略・未来地図−」講演資料(2009年2月23日). http://hdl.handle.net/2433/70898 【特別インタビュー】 ■どのような研究をなさっていらっしゃいますか?
 中心的な研究テーマは「政府情報へのアクセス」です。もともと政府の情報公開に関心があったのですが、法律や規則の解釈だけでなく、図書館を通じての政府刊行物の提供や文書管理・記録管理といった具体的な仕組みをどうするか、という点にこそ情報公開改善のカギがあるだろう、という思いで研究を進めてきました。さらに、電子政府の進展とそこでの図書館・文書館・記録管理の役割、という関心からも研究を行っています。  現在では図書館と文書館(アーカイブズ)の双方に足場を置いて研究に取り組んでいますが、特に「情報政策の中での図書館・文書館の位置づけ」というのを意識しています。情報政策というのは「情報の生産・流通・利用の望ましい在り方に関して政府が定める基本的方針と、それを実現するための手段・事業」とまとめられますが、特にさまざまな関係者(ステークホルダー)がもつ利害関心と、その調停・調和の方法を意識する必要があります。大学図書館活動や学術情報の流通・利用についても、こうした政策的視点から取り組むことが必要だと考えています。
■KURENAIの取組みをどのように思われますか?
 意義としてまず挙げられるのは、京都大学の研究成果を広く発信し社会貢献にも寄与するという点、また多少なりとも信頼性のある情報をネット上に提供するという点です。それから大学図書館の立場から言えば、大学図書館がより主体的に学術情報の流通に関与する、また研究者とよりダイレクトにつながりをもつ、というかたちで大学図書館の存在意義の向上につながるのではないか、と思います。  今後の課題としては、まずリポジトリ上のコンテンツの保存について真剣に考える必要があります。デジタルな情報ということで、ハードウェア・ソフトウェアの更新にどう対処するか、また外部からの侵入や災害にどう備えるか、などの課題に取り組まないといけません。この点については海外の先行事例を参照しつつ、日本なりの、あるいは京大なりの解決法を構築することも求められるでしょう。  また、KURENAIの活用事例(研究成果のアピールや授業への活用など)を図書館としてどう発信するか、学術出版社との関係をどう再構築するか、などの課題もありますが、いずれも「大学図書館が学術情報流通の新しい地平を切り拓く」という点で、わくわくするような課題だと考えます。さらに、KURENAIを軸とした京大の図書館としての試みを、大学図書館界や研究者のコミュニティなどと広く共有できるようにできるといいな、と思っているところです。
■今後図書館とどのような活動をなさっていきたいですか?
 リポジトリをめぐる課題は上述の通りですが、より広い視点で言うと、大学活動の中で生産される情報・データ等をどう管理し活用・発信するか、という点に取り組む必要があります。この点に関しては、学内でも大学文書館、総合博物館、研究資源アーカイブなどの組織が、それぞれの使命と役割を担って活動しています。図書館としてもこれらの組織とどのような関係をつくり連携していくかが課題になると思いますし、私もこの点に貢献できればと思っています。  また、2月23日の講演(参照: http://hdl.handle.net/2433/70898 )と関連する点ですが、図書館としては「アピールしたい相手を明確にしつつ、的確な発信を行うこと」を心がけないといけない、というのを常々思っているところです。上記の講演では国際的発信という点に重点を置いたのですが、国内にしても、また学内にしても、「相手は図書館のことをどう思っているか、図書館はどう見られたいか」ということを意識する必要があります。これは最初に述べた情報政策やステークホルダーのこととつながる話です。私としてもさまざまな場面で、リポジトリに限らず「図書館の発信力」を高める ための取り組みを行っていきたいと思います。
古賀先生、お忙しい中、ありがとうございました。 今後、京大リポジトリ事業では、古賀先生とご一緒にKUERNAIを成長させていく予定です。 [附属図書館電子情報掛]
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