漢籍の探し方
漢籍を検索するための工具書(参考図書)や目録・データベースを紹介
1.漢籍とは?
主として、1911年以前に中国人が中国語などを用いて自著、編集、注釈、翻訳、筆述した著作を指します。漢籍は、OPAC等にまだ登録されていないものが多いので、様々なツールを使用して探す必要があります。
なお、和刻本漢籍(日本人が出版した漢籍)や準漢籍(日本人による編著および本文中に日本人が注釈や考証を加えて書名を付けたもの)などは、国書に含まれる場合もありますので、レファレンス・ガイド「国書の探し方」もあわせて参照してください。
2.漢籍を探すには?
漢籍を探すためには、様々な工具書(参考図書)や目録・データベースを上手に使いこなす必要があります。ここでは漢籍を探す上でのポイントとツールを紹介いたします。
0. 漢籍について知る
漢籍の形式や特徴について知っていると漢籍を上手に探しやすくなります。
- 陳国慶著 ; 沢谷昭次訳『漢籍版本入門』(研文出版 , 1984)
- 魏隠儒, 王金雨著 ; 波多野太郎, 矢嶋美都子訳『漢籍版本のてびき』(東方書店 , 1987)
- …中国の印刷技術の歴史や書物の装幀や用語について記した本
- 倉石武四郎述『目録学』<東洋学文献センター叢刊>第20輯(東京大学東洋文化研究所附属東洋学文献センター刊行委員会 , 1973)
- 清水茂著『中国目録学』(筑摩書房 , 1991)
- 井波陵一『知の座標 : 中国目録学』(白帝社 , 2003)
- …中国の目録法および分類法の歴史について記した本
1. 漢籍の解題や版本の種類を調べる
探している漢籍はどのような内容のものか、また、どのような版本(テキスト)の種類があるのかを調べましょう。
- 『四庫全書総目提要』(※複数版あり)
- …『四庫全書』(1781年頃完成)に収録された漢籍の内容や巻数、撰者、刊行年などについてを記した本
- 『続修四庫全書総目提要』(※複数版あり)
- …『四庫全書』以降の漢籍の内容や巻数、撰者、刊行年などについて記した本
- 邵懿辰撰 ; 邵章續録 ; 中華書局上海編輯所編輯『増訂四庫簡明目録標注』(※複数版あり)
- …『四庫全書総目提要』に収録された漢籍の版本の種類を調べる際に役に立つ本
- 『販書偶記』『販書偶記続編』(※複数版あり)
- …清代を中心に1911?1935年頃までの漢籍の巻数、撰者、刊行年、刊行場所などについて記した本
- 神田信夫, 山根幸夫編『中国史籍解題辞典』(燎原書店 , 1989)
- …歴史関係の漢籍について撰者や解題、版本に関する情報を記した本
- 近藤春雄著『中国学芸大事典』(大修館書店 , 1978)
- …中国の文学・思想・言語などの諸学術に関する人名、書名、事項の解説を記した本
- 桂五十郎著『漢籍解題』(※複数版あり)
- …漢籍の書名、撰者、巻数、伝来などについて解説した本
- 『アジア歴史事典』(平凡社, 1959-1962)
- …事項のほかにも、漢籍の解題や人物についても解説している本
2. 書名の別名を調べる
探している漢籍に別の書名がないかどうか確かめておきましょう。漢籍の書名は巻頭(第一巻第一葉のはじめ)からとることが多いですが、目録規則によっては冠称・角書(書名に冠せられた出版の状況や役割などを表す各種の用語)を省略して書名としている場合や省略しないで書名に含める場合があります。また、巻頭に書名がない場合、序文や跋文、目次などに依拠して決められる場合などがありますので、別書名には注意して漢籍を探すようにしましょう。
- 張雪庵[著]『古書同名異称挙要』(山東人民出版社 , 1980)
- 杜信孚[著]『同書異名通検』(江蘇人民出版社 , 1982)
- 杜信孚, 王剣編著『同書異名彙録』(江蘇古籍出版社 , 2000)
3. 叢書と子目(細目)を調べる
漢籍には叢書という形態をとるものがあります。叢書とは、複数の著作をあつめてひとつにまとめたものをいいます。より細かく叢書を分類して、叢書・彙編(異なる「部」に属する著作をあつめたもの)、叢刻・類編(同じ「類」に属する著作をあつめたもの)、合刻(「部」は同じで、「類」が異なる著作をあつめたもの。また同じ「類」に属する著作をあつめたものも含む)などとする考え方もあります。探している書物が何らかの叢書に含まれているかどうか、またその叢書がどこに所蔵されているのかを調べるようにしましょう。
- 『中國叢書綜録』『中國叢書綜録補正』『中國叢書綜録続編』『中國叢書綜録未收日藏書目稿』
- 陽海清編撰 ; 陳彰?參編『中國叢書廣録』(湖北人民出版社 , 1999)
日本における代表的な漢籍所蔵機関にどのような叢書が所蔵されているかをまとめた目録として以下のようなものがあります。
- 東洋学文献センター連絡協議会編『漢籍叢書所在目録』(東洋文庫 , 1966)
【叢書の例】
- 槐盧叢書という叢書には、初編から五編まであり、そのうちの初編には李氏易解?義三卷や金石三例續編などの著作が収められています。さらに、その金石三例續編は、漢石例六卷、金石例補二卷、誌銘廣例二卷という著作を含む階層構造になっています。同名異書の場合もありますが、探している漢籍が金石例補二卷 の場合は、金石三例續編や槐盧叢書という書名でも探してみましょう。目録の記述の方法によっては、叢書名でしか採録されていない場合もあるので注意しましょう。
4. 漢籍目録で漢籍を探す
冊子体の漢籍目録と漢籍目録データベースを上手に使い分けて漢籍を探しましょう。
全国漢籍データベースで漢籍を探す
全國漢籍データベースは、日本における各機関の漢籍の所蔵を調べるための総合目録データベースです。 全国漢籍データベース参加機関以外の漢籍は、各所蔵機関が発行している冊子体の漢籍目録で調べましょう。全国漢籍データベースに関しては下記のページを参照してください。
日本漢文文献目録データベースで漢籍を探す
日本漢文文献目録データベースは、日本漢文文献およびその関連文献の基本的書誌を網羅したデータベースです。和刻本漢籍および準漢籍を調べる際には、全国漢籍データベースと日本漢文文献目録データベースの両方を検索するとよいでしょう。
漢籍目録で漢籍を探す
漢籍を探すための漢籍目録をKULINEやCiNii Booksで検索します。京大でどのような漢籍目録を所蔵しているかを調べるには「漢籍」「目録」などでKULINEを検索すると良いでしょう。
例:「漢籍*+和漢古書* 目録」でのKULINE検索結果(※一部漢籍目録以外もヒットしています。)
代表的な漢籍目録として下記のようなものがあります。
- 『京都大学人文科学研究所漢籍分類目録』(1963.9-1965)
- 『京都大学人文科学研究所漢籍目録』(1979.3-1980,1981縮刷版)
- 『東京大学東洋文化研究所漢籍分類目録』(1973.2-1975,1981縮印版(合冊訂正))
- 『東北大学所蔵和漢書古典分類目録』(1974.3-1982)
- 『東洋文庫所蔵漢籍分類目録』(1978.12-1993)
- 『内閣文庫漢籍分類目録』(1956,1971改訂)
- 『国立国会図書館漢籍目録』(1987-1995)
- 『東京大学総合図書館漢籍目録』(1995.3-1998)
- 『和刻本漢籍分類目録』『和刻本漢籍分類目録補正』(1976,1980補正,2006増補補正)
漢籍目録の中にはインターネット上で公開されているものもありますので、サーチエンジンで検索すると良いでしょう。
- 電子版東京大学総合図書館漢籍目録
- 電子版広島大学斯波文庫漢籍目録
- 懐徳堂文庫電子図書目録
- 東京大学東洋文化研究所所蔵漢籍目録データベース
- 東洋文庫所蔵漢籍統合データベース
- 国立公文書館デジタルアーカイブ・システム(内閣文庫)
また、漢籍目録に関する文献でどのような漢籍目録があるか調べるという方法もあります。
- 『日本における漢籍の蒐集 : 漢籍関係目録集成』(東洋学インフォメーション=センター,1961)
- 『日本における漢籍の蒐集 : 漢籍関係目録集成-- 増訂版』(汲古書院, 1982)
- 高田時雄「近代日本之漢籍收藏與編目」『(2004年)古籍學術研討會論文集』(輔仁大學, 2004) →著者版
- 山口謠司「紹介 本邦漢籍目録書目」『中國文學報』68, 2004.10, pp.134-146
- 山口謠司「紹介 本邦漢籍目録図録及び解題編書目――附 本邦漢籍目録書目補遺並びに追加」『中國文學報』70, 2005.10, pp.126-133
さらに、冊子体の漢籍目録ではなく雑誌に論文の形で発表された漢籍目録については以下のようなデータベースで「漢籍」「漢籍目録」などのキーワードで検索して文献にあたるようにしましょう。
漢籍の所蔵情報だけでなく、全文画像が公開されている場合もあります。
- 東方学デジタル図書館(京都大学人文科学研究所所蔵漢籍全文画像データベース)
- 東京大学東洋文化研究所所蔵貴重漢籍善本全文画像データベース
- 貴重図書全文画像データ(漢籍)(小樽商科大学附属図書館)
- 九州大学附属図書館医学分館所蔵古医書画像データベース
5. OPAC,CiNii Booksで漢籍を探す
漢籍は所蔵機関によっては、OPACやCiNii Booksに登録されている場合がありますので念のために調べておきましょう。 また、探している漢籍の標点本や現代語訳本、あるいは、その漢籍に関する研究書および研究論文などには詳細な解題や版本の種類が附されている場合があるので確認しておきましょう。
補足. 調べるためのツールを調べる
ここでは紹介しきれなかった漢籍を調べるための有用な工具書について解説した工具書を紹介しておきます。
- 南京大学図書館、中文系、歴史系編写組編『文史哲工具書簡介』(天津人民出版社 , 1980)
- 馮蒸編著『近三十年国外"中国学"工具書簡介』(中華書局 , 1981)
- 潘樹広編著 ; 松岡栄志編訳『中国学レファレンス事典』(凱風社 , 1988)
- 祝鴻熹, 洪湛侯主編『文史工具書詞典』(浙江古籍出版社 , 1990)
- 徳優 [ほか] 編著『中文工具書使用法』(商務印書館 , 1996)
また工具書については、下記のような論文もありますので参照して下さい。
- 長谷川久子,高橋良政「Q&A 工具書の活用と校合の必要性」『漢籍 : 整理と研究』3,1993.8, pp.41-50
- 柳秀子「漢籍整理での工具書 その一」『漢籍 : 整理と研究』5, 1995.12, pp.17-36
- 柳秀子「漢籍整理での工具書 そのニ」『漢籍 : 整理と研究』6, 1996.12, pp.77-97
- 安達勉,柳秀子「Q&A 漢籍整理での工具書 その三」『漢籍 : 整理と研究』7, 1997.12, pp.31-47
- 「Q&A 漢籍整理と工具書の活用」『漢籍 : 整理と研究』10, 2001.12, pp.19-29
- 坂出祥伸「中国古典、特に思想を学ぶための工具書・入門書(試稿本)」『種智院大学研究紀要』7, 2006.3, pp.17-34
3.京都大学にある漢籍の探し方
京都大学では、附属図書館、人文科学研究所、文学研究科、法学研究科、経済学研究科、薬学研究科、工学研究科建築系、工学研究科地球系土木、医学研究科などに漢籍が所蔵されていますが、OPACでは検索できないものがほとんどです。京都大学内に本があるかを調べるには、以下のツールを使いましょう。
1. 全国漢籍データベース
全国漢籍データベースでは、人文科学研究所および文学研究科が所蔵する漢籍を検索することができます。なお、文学研究科が所蔵する漢籍のうち、全国漢籍データベースで検索できるのは『京都大學文學部漢籍分類目録』(1959)に収録されている漢籍のみですのでご注意ください。
2. 全学総合カード目録
「全学総合カード目録」(附属図書館1階)は、京大内のほぼすべての蔵書を検索することができます。まずはカード目録を引いて、探している本が京大の図書館にあるのかを調べましょう。カードが見つかったら、所蔵図書館と登録番号、請求記号を控えて、所蔵図書館のカウンターをお尋ねください。
※ カード目録の詳しい引き方については、レファレンスガイドの「カード目録」(準備中)の項を参照。
3. 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ 」では、京都大学が所蔵する文庫やコレクションに含まれる一部の漢籍を検索することができます。 また、資料の全文画像が見られるものもあります。
4. 文庫目録(冊子体)
学内の特殊文庫に含まれる漢籍については各種文庫目録やカード目録で調べましょう。詳細につきましては、京都大学図書館機構-特殊コレクション-主要コレクションや各部局図書館・図書室のホームページなどもあわせてご覧下さい。
- 村本文庫 『京都大學人文科學研究所村本文庫目録』(1949)
- 中江文庫 『京都大學人文科學研究所中江文庫漢籍目録』 (1949), 『中江文庫目録』 (1964)
- 松本文庫 『松本文庫目録』(1952)
- 内藤虎次郎文庫 『附注内藤文庫目録』(1953)
- 矢野仁一文庫 『矢野文庫目録』(1962)
京都大学内の図書館・室にお探しの漢籍が所蔵されていたら、書名、請求記号、登録番号を控えて、資料を所蔵している図書室へ行きましょう。
4. 海外所蔵漢籍の調べ方
ここでは海外で所蔵されている漢籍を調べるためのツールの一部をご紹介します。
総合目録
複数の所蔵機関が所蔵する漢籍を検索することができる下記のような総合目録があります。
- 中文古籍書目資料庫(Big5)
- 全國圖書書目資訊網(Big5)
- 欧州所在日本古書総合目録
- WorldCat [解説 : Chinese Rare Books in a Union Catalog [OCLC - Past Activities]]
個別目録
中国や台湾の各機関の漢籍目録は各種出版されていますので、CiNii Booksで検索してください。また各図書館のOPACでも検索してみましょう。
欧米の漢籍目録に関しては、下記のような文献がありますので参照してください。
- 坂出祥伸著『東西シノロジー事情』(東方書店 , 1994)
- 坂出祥伸「中国古典籍文献学入門(二)―元明時代より現代中国まで― 附 ヨーロッパの図書館収蔵の漢籍目録」『關西大學文學論集』52(3), 2003, pp.1-46
欧米所蔵機関の漢籍目録
- ロバート・K・ダグラス編『大英博物館所蔵漢籍目録』(科学書院 , 1987)
- モリス・クーラン著『パリ国立図書館所蔵漢籍解題目録』(霞ケ関出版 , 1993-1994)
- Paul Pelliot, Inventaire sommaire des manuscrits et imprimes chinois de la Bibliotheque Vaticane. A Posthumous Work, revise et edite par Takata Tokio, Istituto Italiano di Cultura, Scuola di Studi sull’Asia Orientale, "Reference Series. Italian School of East Asian Studies", I, Kyoto, 1995
- 高田時雄編『梵蒂岡圖書館所藏漢籍目録補編』(京都大學人文科學研究所附屬東洋學文獻センター , 1997)
- 米国議会図書館蔵日本古典籍目録刊行会編『米国議会図書館蔵日本古典籍目録』(八木書店 , 2003)
5. 資料の利用にあたって
漢籍等の利用条件については、所蔵機関により異なります。事前に予約をしなければ閲覧できない場合もありますので、所蔵機関に利用条件等を問い合わせましょう。
なお、附属図書館の貴重図書、特殊文庫については 附属図書館ホームページ:貴重図書の閲覧 をご覧下さい。
★ 分からないことがある時は、図書館員までお問合せください。
連絡先:ref660@mail2.adm Ver.1.2, 2006.3.31, 大西賢人(京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター), Ver.1.4, 2018.1.23, 京都大学図書館機構