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KURENAI exceeded four million papers / Interview with TERAMOTO, Yoshikuni(Graduate School of Agriculture, Kyoto University)

 On 2009-08-14 (6903 reads)
2009年7月21日、京都大学の研究・教育成果を発信する論文アーカイブ「京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI)」の収録論文数が4万件を超えました。 4万件目は、農学研究科・寺本好邦助教の学術雑誌掲載論文、 ■Teramoto Y, Lee S-, Endo T. Cost reduction and feedstock diversity for sulfuric acid-free ethanol cooking of lignocellulosic biomass as a pretreatment to enzymatic saccharification. Bioresource Technology. 2009;100(20):4783-9. http://hdl.handle.net/2433/80167    となりました。 4万件目を記念して、寺本好邦先生にインタビューをお願いしました。 ●寺本好邦先生 - 京都大学大学院農学研究科森林科学専攻生物材料機能学講座 (助教) http://www.fukugou.kais.kyoto-u.ac.jp/teramotoj.htm http://www.fukugou.kais.kyoto-u.ac.jp/frame_indexj.htm Q1: ご専門の分野について教えてください。
A1:木材とその構成成分(セルロース,リグニン等)をはじめ,関連する多糖類など各種生物由来素材を対象に,その分子・材料特性を究めつつ,異種素材との複合化による機能材料化やリファイニングによるエネルギー変換に関する研究を行っています.
Q2: 今回の論文はどのような内容でしょうか? また、研究の進展によってどのようなことを明らかにしようとされているのでしょうか?
A2:今回の論文は,木材からのバイオエタノール生産に必要な前処理技術について報告するもので,主に前の所属先の(独)産業技術総合研究所で検討した結果がベースとなっています.原油価格高騰の折にしばしば報道されたガソリンに代わるバイオエタノールは,既にトウモロコシデンプンや砂糖(ショ糖)から生産され上市されています.その一方で,単位面積当たりの蓄積量が大きく食糧用途と競合しない木材に含まれるセルロースをグルコースに変換(糖化)し,それを発酵してエタノールを生産する技術を確立しておくことは,長期的には重要な課題です.セルロースもデンプンもグルコースが繋がった構造をとっていますが,結合様式が異なるため前者は強固な分子が集まった結晶構造をとっています.さらに樹木中のセルロースは,分子集合体レベルではリグニンやヘミセルロースと複合化されており,それらが集まって細胞?繊維?繊維集合体に至る階層構造を有しています.階層構造があることで樹木は巨大生物として生き長らえることができるのですが,逆に言えば樹体支持を目的とした構造をバラバラにして糖化に持ち込むのは一般には困難です.そのため,木材糖化には厳しい処理が必要という先入観があるのですが,この論文ではエネルギー投入量やプロセスの環境対策を考慮した穏やかな処理でも木材の酵素糖化率を高められるということを実験的に示しました.今後はこの処理の効果を構造論的に解明し,酵素糖化率と構造要因の相関を示す何らかの尺度を見出すことが課題です.
Q3: 今回KURENAIに登録していただいた論文をどのような方に読んでもらいたいですか?
A3: 私自身はこれまで恵まれていましたが,研究環境によっては電子ジャーナルを気軽に使えないところもあるかと思いますので,そういうところへの情報発信に繋がれば良いと思います.身近なところでは投稿論文の体裁を知りたい学生さんにも向いているかもしれません.
Q4: 先生のご専門の分野ではどのような学術雑誌に1年間でだいたいどれくらいの数の論文を投稿されるが一般的ですか?
A4: 私の分野の助教クラスの研究者であれば,自分が密接に関わった論文を1年間に2報以上は発表したいと考えていると思います.個人的には,自ら進めている研究のほかに,現状では修士課程を修了して就職する学生さんが多いので,在学中に学生さんがメインで論文を執筆し国際的なジャーナルに1報は投稿できる状態にしておくというのが理想的だと考えています.それが間に合わなくても,そう遠くない時期に学生さんが著者となった論文を投稿することを目標としています.
Q5: 先生が論文を収集・執筆される際によく使われる電子ジャーナルやデータベースは何でしょうか?
A5: 普段はWeb of Science(Thomson Reuters社)を主に使っています.論文執筆の際に,より幅広いデータを統合的に検索できるSciFinder Scholar(CAS)を使うことがあります.
Q6: 京大の研究成果をインターネット上に公開するKURENAIの取り組みについてご意見・ご感想をお願いします。
A6: 国際的なジャーナルで成果発表するのが一般的な分野でも,研究者のウェブサイトの業績欄からリポジトリに,著作権のことをあまり気にせず(?)リンクを張れるので,中身の濃い情報発信ができる使いでのあるサービスだと思います. これからどんどん全国の大学等でデータ蓄積が進んでいくことと思いますが,その先には国内の大学等を統合したデータベースに,さらには世界的なデータベースへの統合が進むのでしょうか.どの程度の規模がベストなのかはわかりませんが・・・.
*(図書館補足)学術雑誌掲載論文の著作権は学術雑誌出版社側に移譲されていることが一般的ですが、その利用条件の1つとして、所属機関のホームページで原稿を公開することを認める、としている出版社も多くあります。リポジトリ事業では、その点を考慮し、大学の研究成果を大学自身が広報するという立場で論文を主に原稿形式で公開しています。  なお、先生のご指摘のとおり、国内の統合データベースとしてCiNiiJAIROから、世界的規模ではGoogle/Google ScholarScopusからも、KURENAIの収録論文を検索することが可能になっています。 寺本先生、お忙しい中、研究活動や研究成果の発表の仕方がよく分かる丁寧なコメントありがとうございました。 KURENAI事業では、寺本先生にご指摘いただいたように、電子ジャーナルを気軽に使えない多くの研究の現場に、国際的ジャーナルに掲載される京都大学の最先端の研究成果を届けられるように、努力していきたいと思います。 また、研究者ご自身の業績リストを補完するものとして、研究活動の広報に使っていただけるような事業にしていきたいと思います。 ◆京大論文アーカイブ【KURENAI(京都大学学術情報リポジトリ)】   KURENAI(京都大学学術情報リポジトリ)   - 現在約4万件以上の京大研究者の論文を提供 [附属図書館電子情報掛]
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